ひとつの輝き

「お客様?」 


急かすように何度も言う、運転手にため息をつき、ふとあたしは口にした。


「あっ、お金持ってない」 


そう叫ぶと運転手はニコッと微笑んだ。 


「さっき受け取りましたよ」 

…隼人だ。 

ごめんね、隼人。 

ありがとう。 


あたしは運転手に軽く頭を下げシートから降りた。


ビルの前で何分か考えた。 

そして、だした結果は… 




“行く”


その2文字だった。 

いつまでも逃げてちゃダメだと思った。 


あたしはお母さんの居る部屋の前で軽くノックをした。 


「お母さん?」 



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