ひとつの輝き

すぐ外れる自転車に乗るなよ! 

と、思いながら「ごめん」と謝った。 


「美央、つけろよ」


眉を寄せながら言う渉に「無理」と返した。 


「何で?」

「手汚れるじゃん。渉してよ」 

「ばかっ!俺も汚れんだろ」 


あたしと渉は、しゃがみ込んで見ていると、後ろから甲高い声が飛んできた。


「おっはよーん」 


後ろを振り返ると龍斗先輩が自転車をこぐ後ろに里佳さんが立ち、大きく手を振っていた。 

キーと音が鳴って、その自転車は止まった。 


「お前ら何やってんの?」 


そう、龍斗先輩が聞くと渉はあたしの耳元で「ラッキー」と呟いた。 


何が? 

ラッキーなんだ? 


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