ひとつの輝き
「ちっぽけだな」
不意にあたしの口から漏れた言葉に「何が?」と返ってきた。
もー…何もかもが、ちっぽけだよ。
あたしは軽く息を吐く。
「なんか、あたしって、ちっぽけだなーと思って…」
少しの沈黙が続いた後、渉先輩は口を開いた。
「ちっぽけな人間なんていねーよ。ちっぽけって言葉は、この高い位置から見下ろして言う言葉」
先輩は下に指差し「ほら、今歩いてる人、ちっぽけに見えるだろ?」と言った。
あたしは手すりから体を乗り出し下を見た。
当り前だけど、こんな高い所からみると、人は小さく見える。
先輩は「知ってる?」とあたしに一度目を向け、すぐに目線を前に戻した。