ひとつの輝き
2
夜明けがこんなに長いとは思わなかった。
青々とした快晴の空とは違って、あたしの心は真っ黒だった。
全ての闇が重なり合って、目の前の視界すらぼやけていくようだ。
「おはよ。美央、忘れ物」
朝、下駄箱で背後から聞こえてきた声に、あたしは振り返った。
「あー…隼人おはよ」
「鞄」
「あー…」
隼人が差し出してきたのは昨日、持っていた小さな黒い鞄だった。
「ってか普通、こんなの忘れる?」
「ごめ…」
「今日、来ねーのかと思った。もし来てなかったら捨てようと思った」
えっ、捨てるって…
「それは、ちょっと…」
「冗談だけど」
廊下に出たら、あたしの目は一時停止をした。
両手をポケットに突っ込んで歩いてくる渉が目に入った。
どうしよう…
早く走ればいいのに、こう言う時こそ足は動かない。