ひとつの輝き


夜明けがこんなに長いとは思わなかった。 


青々とした快晴の空とは違って、あたしの心は真っ黒だった。 


全ての闇が重なり合って、目の前の視界すらぼやけていくようだ。



「おはよ。美央、忘れ物」 


朝、下駄箱で背後から聞こえてきた声に、あたしは振り返った。 

「あー…隼人おはよ」

「鞄」

「あー…」

隼人が差し出してきたのは昨日、持っていた小さな黒い鞄だった。 

「ってか普通、こんなの忘れる?」 

「ごめ…」

「今日、来ねーのかと思った。もし来てなかったら捨てようと思った」 


えっ、捨てるって…


「それは、ちょっと…」

「冗談だけど」


廊下に出たら、あたしの目は一時停止をした。 


両手をポケットに突っ込んで歩いてくる渉が目に入った。 

どうしよう…

早く走ればいいのに、こう言う時こそ足は動かない。 



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