ひとつの輝き
「美央ちゃん待って」
校門を出た所で、背後から聞きなれた声が飛んできた。
振り返ると、里佳さんが息を切らしながら、あたしの腕を掴んだ。
「どうしたんですか?」
「ちょっといい?」
息を落ち着かせようとする里佳さんに、あたしは頷く。
「ねぇ…渉と何かあった?」
近くの喫茶店に入り、里佳さんは今あたしが聞きたくない…忘れようとしている名前を、あっさりと口にした。
里佳さんは何も聞いていないんだろうか…。
「あの…」
「あのね…」
あたしと里佳さんの声が重なった。
里佳さんは何?
あたしは“もう会いません”って言おうとした。
声が重なると、言ってはいけないように感じた。