スーペリアルームの恋愛倫理
最初の一歩
バツイチ、アラサー、子無し。
さらに社会人経験なしの私は考える。
人生とはなんだろう。
浮き沈みがあったとはいえど、これまで順風満帆だったと思う。
恋愛をして好きな人と結婚し、それなりの道を歩んでいると疑いもしなかった。
たしかに子宝には恵まれなかったけれど、それでも上手くいっていると思っていた。それが一瞬で崩れるだなんてことは頭にもなかった。
それでも離婚届に判を押すときは、なんだかあっさりとしたもので。残ったものは慰謝料といわれるお金ぐらいで。
振り返ってみても何も残っていないことに気付いて呆然としたぐらいだ。
大学を卒業してすぐ結婚した私は、31歳でひとりぼっちになる。
結婚生活は8年ちょっと。
相手は大学のときの教授だ。
中高が女子校だったうえ、年上の男性に憧れていた私はそこで恋に溺れてしまい、彼の心を射止めることができてからは学校で顔を合わすことがあってもコソコソしなければいけないスリル感にドキドキが止まらない毎日だった。
彼はバツイチで前の奥さんとの間に子どもがふたりいたけれど、のぼせあがっていた私は周囲の反対を押し切り卒業後すぐゴールイン。未来になんの不安もなかった。
目覚めればすぐ隣で寝ている彼に「おはよう」と口づけ、朝日が差し込むキッチンで朝食を作り、彼を送り出してからは掃除、洗濯、たまに友だちとランチ。そして晩御飯の献立をウキウキ考える。
こんな、なんてことない平凡な日々に幸せを感じていた。
クールな彼に対し、いつまでも片想いのようなドキドキとした気持ちを持っていたのだ。
毎日がキラキラと輝いていた。
——それなのに。
「はあ……」
教え子に手を出すという彼の手癖は治らなかったようだ。しかも彼女は妊娠していた。
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