そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
残念御曹司の答えに満足した私は、笑顔をはりつけ、さっそく本題に入ることにした。


「慎吾さん、先日はありがとうございました。
とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。
でも、慎吾さんとはあんまりお話できなくて残念でした。私、もっと慎吾さんとお話してみたいと思ってたんですよ~」


実は先週の金曜、受付嬢のネットワークを駆使して、九条慎吾も含めた何人かで飲み会をした。

ついでに、グループで連絡先も交換済み。

さらに言うと、まわりに九条慎吾狙いだとも、すでに言ってある。


狙っている相手が仕事関係の場合、周囲への対応は慎重になるべきだけど、本気の場合は別。

逆に、早めに周囲へ知らせて、敵を潰すべし。

失敗した場合は職場に居ずらくなる場合もあるから、諸刃の剣だけど、ここは背水の陣よ。

敵を追い込む前に、自らも追い込む。
絶対に失敗はできない。いいえ、しないわ。

絶対に、セレブ妻への道を切り開くのよ。


「え?本当ですか?」

「やだ~、嘘なんてつきませんよ~。
本当です」


九条慎吾はやっぱり戸惑っているみたいだったけど、まんざらでもなさそう。

よしよし、もう一押しね。



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