そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「このあとって、何か予定とかありますか?
せっかくお会いできたんだし、よかったらお食事でもいきません?」


偶然じゃなく、おもいっきり待ち伏せしてたけど、ね。

餌を待ち構える、毒蜘蛛のように罠を張り巡らせながらも、さも何も知らない純真な女のようにふんわりとほほえむ。
 

「......え、あ、はい、ぜひ」


はにかみながらも嬉しそうな御曹司に、心の中でガッツポーズをする。

気の早いことに、セレブ妻よっしゃあ!と叫びだしたい気持ちでいっぱいだったけど、まだ第一段階クリアしたに過ぎない。我慢我慢。


「真由さんは、今日は車でこられましたか?」

「いえ、電車です」

「そうですか。自分車なんで、一緒にいきましょう」


御曹司の車......。
ということは、あそこにいくのね。

九条慎吾の後をついて、何度かいったことのあるビル地下の駐車場へと向かう。
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