そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
てっきり、お人好しで、世間知らずで、騙されやすい残念なだけの御曹司かと思っていたけど、少し認識を改めた方がいいかもしれない。

いざというときは行動力もあるし、手際が良い面もある。

それに......。

意外と男らしいところもあるんじゃない。

少しだけ、見直した。


「ごめん、嫌な思いさせて」


スーツの上着をとり、ネクタイをゆるめている慎吾を、えらそうに上から目線で分析していると、突然苦笑いで謝られる。 


「そんな、嫌な思いなんてしてない。 
慎吾のことを心配してくださる素敵なお母様じゃない。
慎吾を育ててくれたお母様なんだから、これからきっと仲良くなれる」


ベッドに腰かけた慎吾の隣に座り、うつむいている慎吾によりそうように、そっと腕に触れる。

本当は、性悪ババアと思った、なんて口がさけても言えない。言わない。


「......ありがとう。
そう言ってくれると助かるよ」  


力なく、だけど、ほっとしたように笑った慎吾に、もちろんよと優しく笑いかける。

もちろん、この私があの程度でへこむわけがない。
 
あんなプチ嫌がらせでいちいちメソメソしてたら、セレブ妻がつとまるわけがないでしょ?









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