そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「あんな感じで、家族みんなガツガツしてるし、攻撃的で、昔から少し苦手なんだ。
なんとなく、あの中じゃ居場所がなくて。 

......悪い人たちじゃないんだけど」


相変わらず苦々しく笑いながらも、悪い人たちじゃないとフォローを入れる慎吾にはあきれてしまった。

兄にまでイヤミ言われてたじゃない。
どこまでお人好しなのよ。


「慎吾のご家族だもの、もちろん悪い方たちじゃないんでしょうけど、慎吾は安らげなかったのね。

私が......、

慎吾の居場所になれたらいいのに」


今まで極力結婚を匂わせる発言は避けてきたけど、このタイミングを逃すわけにはいかない。

一世一代の大勝負に出ることにした。

苦手な家族に会って疲れたのか、肩を落とす慎吾を包みこむように、後ろから手を回す。

まだ付き合って2ヶ月、もちろんすぐに結婚話に進展するとは期待してないけど、「ただの彼女」から「結婚したい女」へと、慎吾の中で少しでも認識が変わればもうけものね。


「......真由」


私が後ろから回した手に触れた慎吾の反応に手応えを感じ、さらにもう一押しする。
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