そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
よくしゃべったせいか、ラーメンを食べたせいか、本当に喉がよくかわく。

セルフでついだ水を再び一気に飲み干す。


「男は私を裏切るけど、お金は私を裏切らない。
だから私はお金が好き」


ちょうど私たち以外は客足が途絶えた深夜の店の中。
私たちの会話に全く入ってこない店主が、妙にシュールだ。 

今まで真顔だった大輔だけど、ついにこらえきれないといった様子で吹き出す。


「真由ってなんでいつもキャラ作ってるの?
普段からこのままでいけばいいのに」

「どこの誰が、計算高くてお金目当てな腹黒女と結婚したいっていうのよ?どうせ男はみんな純粋で可愛い女が好きなんでしょ?」

「そうか?俺は面白いと思うけど。
真由といると飽きないし」


いきなりとんでもないことを言い出した大輔を即否定しても、なぜか穏やかな笑みを向けてくるやつには毒気を抜かれる。

けど、面白い、ではダメ。
私は飲み会の盛り上げ役、いいお友だちなんて望んでない。

付き合いたい、結婚したい、じゃないと。
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