そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
はっきり拒絶したにも関わらず、まだ引き止めようとしてくる御曹司に、そろそろ失礼しますと席を立とうとすると。


「わかった、はっきり言うよ。
誘ってるんだ。慎吾よりも満足させる自信あるよ」


いつものやり口が通じないと分かったのか、今までとは手法を変えて、ド直球できた御曹司を冷めた目で見る。

満足させる自信......、ね。

そんなに弟の恋人って奪いたいもの?


「お断りします」

「え?」


まさか断られるとは思ってなかったのか、慎吾の兄は面食らった顔をしている。

どれだけ自信があるのよ。


「お断りします。
十分満足させてもらってるので、結構です」

「は?本気で?
意外とあいつって......、すごいの?」

「......」


何を想像してるのよ。

今まで完璧にゆるふわ系に擬態できていたはずだけど、妙な言い方をしてくる兄御曹司には、思わず真顔になってしまった。
  

「私は、慎吾さんを愛してます」


セレブなイケメン長男御曹司とのたった一夜限りの刺激と、残念三男御曹司の慎吾を比べたら、どう考えても慎吾をとるに決まってる。

そのたった一回で、慎吾の愛とお金を失うかもしれないのに、それよりも価値ある浮気って何?

価値があれば、別だけど。





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