涙のYOKOHAMA
『愛鍵』をもらってから、私たちの距離はグッと縮まった……。

と、言いたいところだけれど、そんなことはなかった。

手を繋ぐとき、抱きしめるとき、キスをするとき、結ばれるとき。

ふたりの恋の階段を、一段上るときは、私から誘った。

寿彦さんは『ノー』とは言わなかった。まぁ、イエスもノーもなく、私が押し切ってしまったのかもしれないけれど。

いつも、なにも言わずに私を受け入れた。だから、なにも聞かなくても、寿彦さんは私を好きなんだと思っていた。

好きなんだと思い込んでいた。思い込むようにしていた。

いつまでたっても、寿彦さんからの誘いはないし、『好き』のひと言もない。

でも私を、私だけを、好きでいてほしい。私はこんなにも寿彦さんを好きなのに、寿彦さんからの『好き』を感じられない。

だから、思い込むようにしていた。

寿彦さんは、私を好きなんだ……って。



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