涙のYOKOHAMA
他の客に紛れて、用もないのに、ホテルに足を運んだ。

土足で歩くのが申し訳ないくらいの、ピカピカに磨かれた床。高級感漂うロビーには、座り心地のよさそうなソファ。

気分だけでも、味わって帰ろう。今日は、誕生日。クリスマスなんか、ついでや。

思い切って、ソファに座ってみる。案の定、心地がいい。このまま、眠りに落ちたいくらいの安らぎに包まれた。

それなのに、あなたは来ない。

自分が悪いとわかっている。私の八つ当たりで、一方的に別れたのに。来るはずのないあなたを、待っている……。

視線を足元に向けると、涙がこぼれてしまいそう。

「彼氏でも、できたの?」

その声の方に、視線を向ける。

高級感漂う、夢のような空間で、私は本当に眠ってしまったらしい。

目の前に、大きな影。それは、来るはずのない、寿彦さんそのものだった。

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