拗らせDKの偏った溺愛
「嘘ついてんじゃねーよ。今、俺が名前呼んだのに聞こえねーフリしただろーが」
「と、とんでもない!!ただっ!」
「ただ?」
「高村くんが用もないのに私のことを呼ぶはずはないと思いまして。となれば、聞こえたのは幻聴かと…」
これまたツッコミどころが増えたな。
「なんで用がないって思ったんだよ?」
「その、まだお昼じゃないので…」
なるほどな。
俺がコイツに用がある=昼飯を買いに行け
ってことだと思ってたわけか。
まぁ、貴紀に下僕扱いをやめろと言われたものの、美咲が何も言わないことをいいことにパシリを続けさせているから、当然といえば当然だな。
となると、最初にした約束はまだ続行中ってことになる。
「…最初に"俺への返事は「はい」だけ"って言わなかったか?」
「はっ!そ、そうでした!」
「それと、俺のことなんて呼ぶんだっけ?」
ひとつひとつ指摘していくと、その度に美咲の狼狽えぶりが酷くなっていく。
すげぇ面白い。
「あのっ、それはその…な、名前でお呼びすることになっていますが…」
「そういえば俺の名前、なんだかんだで呼んだことねーな?あれ?まさか俺の名前忘れた?」
白々しく聞くと、
「と、とんでもない!!忘れたりはしていないのですが…」
そう言いながら、とうとう俯いてしまった。
「そうかそうか、美咲は忘れっぽいんだな。返事のこともだし、名前で呼べって言ったことも守れないとは。仕方ないけど、約束は約束だからなー。あとでお仕置き…」
『お仕置きしないとな』と言おうとしたのを途中で遮って
「申し訳ございませんでした!!!!!」
と、土下座しそうな勢いで謝ってくる。
どうやらお仕置きは嫌らしい。
けど、ここで許すと俺が面白くないっての。