拗らせDKの偏った溺愛
マジかよ。
全然可愛くないっつーの。
ひったくりも立派な犯罪だし、普通に逮捕されるって。
はぁ、最悪だ…。
けど、金子先輩の性格からすると、言い出したからには今更やめようなんて言っても聞かねーだろうなぁ。
この春に卒業して、4月からは社会人として働くくせに…なにを考えてんだこの人は。
「冗談キツイっすよー金子先輩」
ダメ元で金子先輩にへらへら笑いながら言ったけど、
「お前から俺の誘いに乗ったくせに、ごちゃごちゃ言うなよ」
と、ヤバイ感じの目つきで言うから諦めた。
もちろん俺だって本気でひったくりをしようなんて思ってない。
いくら悪いって言っても、そこまで分別がないつもりはない。
まぁ金子先輩が納得するようにひったくるフリをして、やっぱ無理でしたって言えばなんとかなるだろ。
「しゃーない、1回だけですよ。先輩もだけど、俺もまだ捕まりたくないんで」
軽く溜め息をつきながら言うと、先輩は
「さすが竜也、俺が見込んだだけの事はある!じゃあ、俺が運転してやるから、お前俺のケツに乗って女の鞄ひったくれ」
と言ってきた。
誰がお前に見込まれたいかよ…後輩に犯罪の片棒担がせるとか、とんでもない奴だな。
って俺が言っても説得力ないか。
…この頃の俺はマジで最悪だったな…。
そんなどうしようもない俺が変われたのは、この後にわけわかんねー出会い方をした美咲のおかげなんだけどな。