拗らせDKの偏った溺愛
〈貴紀です〉
竜也がまた、つまらなさそうな顔をしている。
さっきから雑誌を持つ手は止まったままで、目線はどこか遠くを見ている。
明らかに雑誌に意識はないな…。
竜也には…本人の自覚は皆無だと思うけど…なんとなく、どこで何をしていても、自然と周りの目を引く存在感のようなものがある。
それは子供の頃からで、小学校の頃はいつもクラスのリーダーだった。
明るくて活発で、いつも、誰よりも楽しそうに笑っていた。
誰とでもすぐ仲良くなるし、友達に優先順位をつけたりしない。
その反面、僕はといえば。
小さい頃は病弱で、友達を作るのが苦手だった。
当時の僕は、自分に対して全くといっていいほど自信がなかったのもあって、学校では、いわゆる陰キャラ扱いだった。
それでも竜也は引っ込み思案な僕を、あちこちに引っ張って行ってくれて…。
人一倍暗い性格の僕が、竜也みたいに誰からも好かれるようなヤツの側にいてもいいんだろうか、なんていう悩みを打ち明けた時は一笑に伏してしまって。
「貴紀は俺の親友だから」
なんて照れ臭いセリフを、わざと僕やみんなの前で堂々と言ってくれたこともあったな…。
一緒にいると心が軽くなるような大切な友達。
それが僕にとっての竜也であって、それは今も昔も変わらない。
変わったとすれば、成長するにつれて僕の人付き合いが上手くなったことと…。