拗らせDKの偏った溺愛
「1人で高校に殴り込みに行ったらしいよ」
「暴走族を1つ潰したって聞いたぜ」
「彼女を守るために拳が血で染まったって」
取りようによってはカッコよくも聞こえるような、まことしやかな噂話はどんどん広がっていった。
竜也はなぜか僕と二人でゲームをしているときに、ほんとうのことをポツリポツリと話してくれた。
だから僕だけは真実を知っていた。
でも、僕がみんなに本当のことをきちんと説明しようとしたら、竜也に止められた。
「いい。お前だけが知ってれば、それで十分」
そう言ったきり、この話はもうするな、って言われてしまって…それっきりだ。
竜也と竜也の周りとの間になんとなくできてしまった、目に見えない溝みたいなもの。
僕はそれが深まっていくのを、なす術もなく見ているしかなかった。