拗らせDKの偏った溺愛
とにかく、この時の俺は
しょうがない、さっさと終わらせるのが1番だな、くらいにしか思ってなかった。
「前から目をつけてるいい感じの道路があるんだよ」
そう言った先輩に連れて行かれたのは、静かな住宅街の中を通り抜ける道路。
確かにガードレールがカーブのところにあるくらいで、あとの直線にはない。
けど、ひったくりってのは物を盗られるだけじゃなく、その時にコケたり引きずられたりしてケガをするリスクまである最悪な犯罪だ。
やっぱりやめよう…。
そう思って先輩に声をかけようとしたら、突然先輩が
「来た!」
と小さく言った。
思わずその目線の先をたどって後ろ向くと、向こうの方から女が1人歩いて来るところだった。
眼鏡をかけて髪を耳の下あたりで2つに束ねている。
…地味女。
それが俺のアイツに対する第一印象だった。