拗らせDKの偏った溺愛
「え、トラくん⁉︎」
最初に立ち上がって虎谷くんの姿を見た方が、まるで幻を見たかのような顔をされています。
他の方も取るものもとりあえず、といった感じで立ち上がられているようで…片手にペンキの缶、もう片方の手に刷毛を握りしめたまま…という方も。
「きゃあ!ホントにトラくんだぁ〜!」
「うっそ、久しぶりだし!!」
「会えるとか、めっちゃうれしい〜」
みなさんが口々に喜びの声を上げながら虎谷くんのところへと駆け寄っていかれました。
「あれ?今日はお一人っすか?」
森本くんが虎谷くんを囲む女子越しに質問されました。
「うん、今日は竜也いないんだ」
虎谷くんが少しだけ眉を寄せながらお返事されたと思えば、
「え〜、リュウくんいないの〜」
と、残念そうな女の子たちの声が。
「トラくん1人とかめずらし〜」
なるほど。
虎谷くんと高村くんが二人でワンセットと思っていた私は、あながち間違っていたわけではないようです。