拗らせDKの偏った溺愛
「この旗、どうするんだ?」
「当日、観覧席の後ろに飾っておくんだけど、応援合戦の時は応援団の人が持って旗振りっていうのをやるのに使うよ!」
立て続けに高村くんに質問されて、佐藤さんはますます顔を赤くしながら一生懸命にお返事されています。
でも、なんだか引っかかります。
「去年も体育祭では同じようにしてましたよね?」
今年入学した1年生ならいざ知らず、私たちは2年生です。
去年もクラスの応援旗は全クラスが作りましたし、観覧席の後ろに飾っておくのも、応援合戦で旗振りに使われるのが一番の見せ場なのも同じです。
ですから、私としてはごくごく自然な流れで浮かんできた疑問を言葉にしたのですが…。
佐藤さん達が一斉に、それも少し驚いたような顔をして私を見てらっしゃいます。
「?」
私はまた何かマズイことでも言ってしまったのでしょうか?
「あ〜、僕と竜也は去年の体育祭、出てないんだよ」
微妙な空気を破ってくださったのは虎谷くんでした。
「っていうか、藤原さんってそんなことも知らずに、よくリュウくんの下僕やってるね?」
悪気はなさそうですが、佐藤さんに”えっちゃん”と呼ばれていた東雲さんが、ちょっと呆れたような顔で言うと、
「始業式の日に言ってたけど、委員長って本当に竜也くんと貴紀くんのこと知らなかったんだね?」
と、重ねてこられたのは、同じく佐藤さんに”京子”と呼ばれていた高橋さんです。
「えっと、その…」
そう言われてなんと答えるのが正解なんでしょうか…。
言葉が浮かんできません。