拗らせDKの偏った溺愛
教室に着くなり目に飛び込んできたのは、さっき見た写真と同じ位置に腰掛けている美咲だった。
向かい合う男子との距離は、写真で見たほど近くはない。
が、そもそもの距離が近いように思える。
とはいえ、勢いでここまで来たのはいいものの…なんと言って声をかける?
一瞬考えたが、これと言って良いセリフが浮かばない。
しかたがないので、手近にあった教室のドアに思いっきり手をついた。
「バンッ!!」
突然した音に、美咲はもちろん、向かいに座っていた男もこちらを振り向いた。
2人とも目を見開いて驚いていたが、そんなことはどうでもいい。
大股で2人のところまで近づくと、威嚇の意味も込めた低い声で
「お前、こいつとなにやってんだ?」
と、男のほうに言ってやった。
・・・誰だっけ、こいつ?
名前はわからねぇけど、たぶん同じクラスだと思われる男は、俺がにらむと顔を真っ青にして
「た、体育祭当日の委員の仕事をっ、仕事の内容を、う、打ち合わせっ、して、してました!すいません!!」
とだけ言うと、小刻みに震えだした。
この様子なら、俺の言うことに素直に従いそうだな。
そう判断した俺は、睨むのをやめてやった。
代わりに、教室を出ていけという意味を込めて、無言のまま顎だけを教室のドアの方へ向けた。
俺のことを瞬きもせずに凝視していたそいつは、
「じゃ、じゃあ!」
とだけ言うと、転げるようにして教室から出て行った。