拗らせDKの偏った溺愛
ふん、たいしたことなかったな。
男が出て行ったドアを見ながら、心の中でそんなことを考えた時だった。
「はぁ~」
見なくてもわかるため息の主、貴紀だ。
ゆっくりと声のした方を見ると、教室の後ろから髪をかき上げながら歩いてくる貴紀と目が合った。
「竜也さぁ、なんなの、その格好」
呆れた顔で言われたが、なんのことかさっぱりわからない。
「あ?なにが?」
ぶっきらぼうに答えると、
「なにが?じゃないよ、ホントに。シャツ。・・・全開だし。なんで?」
お前は俺のオカンかよ?と思うようなことを呆れた口調で言われた。
「しょーがねーだろ。1年の時に私服で校内に入ったら、体育教師のゴツい奴に見つかって面倒なことになったんだよ」
そもそも制服を着る必要さえなければ、面倒なボタンなんてものがついているシャツを、好き好んで着るわけがない。
それを説明しようとしたら、
「だから?」
と、貴紀がジトっとした目で見てくる。
「だから!しょーがねーから、一応制服に着替えてきたんだっつーの!!」
クソッ、貴紀のせいで、言い訳がましくなったじゃねーか!
これ以上言うと、余計にカッコ悪いセリフを吐きそうになったから黙った。
こういうときは、貴紀の好きなようにさせていた方が早く終わる。
「だいたい制服を着てきたのはいいけどさぁ・・・」
貴紀が、俺のシャツのボタンを止めながら説教を始めた。
教室の後ろにいる女たちはキャーキャー言い始めるし・・・。