拗らせDKの偏った溺愛


〈美咲〉


高村くんのイライラが絶頂を迎えようとしていたちょうどその時、私は人ごみをかき分けて佐藤さんたちのところにたどり着いていたのです。

そして、あれこれ悩んだセリフも決まり、いざ深呼吸して・・・


「み、みな・・・」


「こら、美咲!!お前、俺の許可なくどこほっつき歩いてんだ!!さっさと来い!!」


私が考えに考え抜いたセリフ、

”みなさん、下校時間になりましたので、すみやかに帰り支度を整えて、時間の10分前には教室を、5分前には校門をでられるようにしてください!”

は、最初の2文字を残して全く声に出せませんでした。

代わりに


「は、ひゃい!!」


という、噛み噛みの返事だけで精一杯でした。

高村くんの声は、そんなに大きな声ではなかったのですが、それでも教室の前へと押し寄せていたみなさまが、ザっという音とともに全員で振り返られました。


「え、あの、その・・」


あたふたしていると、目の前の人ごみがサッと左右に分かれて、高村くんが現れました。


「お前〜〜〜!どんだけ待たせるんだよ!!」


お、鬼です。鬼の形相の高村くんが目の前に…


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