拗らせDKの偏った溺愛
そんなことを心の中で思っていると、高村くんはちょっと考えてから
「要は、こいつらが今すぐ帰れば、お前の仕事も終わるってことだよな?」
と、おっしゃいました。
「は、はい」
とりあえず、その通りなのでお返事をすると、高村くんは視線を私から私の背後で成り行きを見守っているであろうみなさんに移すと、
「よし、そういうことだ。お前ら今すぐ帰れ!」
と一言おっしゃいました。
えぇ!そんな言い方をしては…!!
もしこれが私の言ったセリフであったならば、想像するだに恐ろしいブーイングが返ってくるのは必須です。
たとえ高村くんとはいえ、私の仕事を終わらせるために言われた言葉にどんな返事が返ってくるのやら…!
瞬時にそこまで考えると、私はぎゅっと体に力を入れて、きたる罵詈雑言に備えました。
ところが、
「「「はーい!!」」」
「リュウくん、明日も来てね!」
「竜也さん、待ってます!」
「じゃあまた明日ね〜」
「委員長お疲れ〜」
なんということでしょう!
いつも時間だからと帰るようお願いしても、いつまでもグズグズとしている方たちが、さっさと帰って行かれます。
ものの数分で教室には高村くんと私以外、誰もいなくなってしまいました。
「ほら、これでいいんだろ?さっさと鍵閉めろよ」
「あ、は、はい!」
なんだか狐につままれたような感じです。
鶴の一声、再び、です。
驚きといまだに信じられない光景を前に呆けていた私ですが、高村くんに急かされて、なんとか手足を動かすことができました。