拗らせDKの偏った溺愛
体育祭前夜に向けて
大急ぎで教室を施錠して職員室に鍵を持っていった後、高村くんに言われた通り、学校の裏門へと向かいました。
裏門を出ると、高村くんがバイクに寄りかかって待ってらっしゃいました。
黒光りする車体にシルバーのフレーム。
まるで佐藤さんがデザインされたクラスの応援旗に描かれた龍が、そのまま車体になったようなバイク。
それに長い足を投げ出して寄りかかるその姿は、まるでバイクごと雑誌から抜け出してきたモデルさんのようです。
一瞬見惚れていたのかもしれません。
「遅い!」
という、高村くんの鋭い一言でハッと我にかえりました。
「す、すみません!!」
一応、全力疾走で来たつもりですが、どうやらだいぶお待たせしてしまったようです。
「行くぞ」
「は、はい!!」
んん??
思わず「はい」と言ったものの、いったいどこへ行くのでしょうか?
戸惑う私など、どこ吹く風くらいの扱いなのでしょうか。
おもむろにポンとヘルメットを渡されました。
これはヘルメットを被れということでしょうか?
ということはこのバイクに私も乗るということ???
「あ、あの、これからどこへ行くんでしょうか?」
勇気を振り絞って恐る恐る聞いてみたところ、シンプルなお返事がありました。
「俺ん家」
「へ?」
間の抜けた私の返事に、意外にももう一度言ってくださいました。
「俺の家だっての」
家?高村くんの??なぜ???
それを質問するチャンスはありませんでした。
「さっさと乗れよ、いつまで待たせるつもりだ」
眼光鋭く睨んでくる高村くんに言われたら、誰だって大急ぎでその通りにすると思います。。。