拗らせDKの偏った溺愛
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立派なマンションの前で降ろされたかと思うと、最上階まで連れてこられました。
バイクでの恐怖がやっと終わったと思いきや、高村くんにぎゅうぎゅうとしがみついていたことに気づき、全身から火を吹きそうなくらい恥ずかしかったので、どこをどうやってきたか覚えていません.
気づくと乗っているエレベーターの行き先が最上階になっていました。
いまだ羞恥に悶える私をよそに、どうやら高村くんのご自宅に着いたようです。
高村くんのご自宅はマンションの最上階、しかもエレベーターから出ると扉が2つしかありませんでした。
かなり大きなマンションのように思いましたが、ワンフロアに2部屋しかないのでしょうか!?
思わずキョロキョロと見回すも、足元はフカフカの絨毯ですし、一見ホテルのようにも見えます。
高村君はというと、慣れた手つきで向かって左にある扉を開けて入っていかれます。
私も大急ぎでその後を追いかけました。
広い玄関で靴を脱ぎ、小さな声で
「お邪魔します」
と言ってから、再び部屋の主である高村くんの後を追いかけました。
彼は既に廊下の先にある扉の向こうへ姿を消されています。
すでに閉じてしまったその扉を恐る恐る開くと、
「うわぁ…」
感嘆の声ではありません。
思わず残念な声が漏れてしまうくらいの汚部屋が広がっていたのです。
広々としたリビングにおしゃれな家具、まるでテレビドラマで見たようなセレブ感あふれる豪華なリビングで”あった”であろう部屋です。
先を行く高村君は、床に散らかったゴミを避けて……いません。
踏みつけたり蹴散らしたりしながらテーブルと思わしきもの (所狭しとゴミ? 食べ物?ひと目では正確に判別できないようなものが山積みです)の近くまで行かれると、唯一物の置かれていない椅子に腰かけられました。
そして、そのぐちゃぐちゃのテーブルの上に鍵の束をポイっと投げられると
「 この部屋きれいにして」
と一言だけおっしゃったのです。
そうです。
そう言えば、席替えの時に言いつけられた新しい仕事は”今度掃除を手伝え”でした。
てっきり、学校の掃除当番のお手伝いだと思っていましたが勘違いだったようです。
ここの掃除……なかなか手強そうですが、母を亡くして5年。
5年前から我が家の家事は私の担当です。
主婦歴5年の腕前を発揮すればなんとかなるはず!!
私は気合いを入れて腕まくりをすると、掃除に取り掛かることにしました。