拗らせDKの偏った溺愛
〈竜也〉
やっと自分の家へ帰ってきた。
当初の予定ではパッと学校へ行って、相手の男に喝を入れたら、美咲を連れてサッと家に帰るつもりだった。
それなのに、体育祭の日に学校に行くだけじゃなく競技にまで参加することになった上に、散々待たされたし。
おまけにやっと戻ってきたかと思ったら、美咲が実行委員とクラス委員の仕事が…とか面倒なことを言い出すから、我慢できずに代わりに終わらせてやった。
ったく、あれくらいのこと、ガツンと言えばすぐに終わるつーの。
どうせ美咲のことだから、大勢に向かって声をあげるのに毎回ぷるぷる震えていたんだろう。
俺の知らないところで、美咲が拳を握りしめて震えていたのかと思うと、またイライラが蘇ってきた。
クソッ、なんで俺が美咲ごときのことで、こんなにイライラしなきゃなんねーんだ。
イライラしながらバイクをスタートさせたからか、急発進になった。
そのせいで美咲が思いっきりしがみついてきて、不覚にも緊張してしまった。
今までにも、バイクの後ろに女を乗せたことなんで何度もあるっていうのに、不意にしがみついてきた美咲の体が、思った以上に柔らかくてびっくりしたせいだ。
だ〜〜〜、なんなんだ、これ。
正体不明の感情に、さらにイライラを募らせながら荒っぽい運転をしたせいで、余計に美咲がしがみついてきていたことに気づかないくらい動揺していた。