拗らせDKの偏った溺愛

事故!?




「なにそれ!あり得ない〜!!しかも、そんなヤツを怪我しないように庇うとか、やらなくていいのっ!!」


新学期初日の今日、学校までの道すがら、春休み初日に起こった事件について綾乃ちゃんに説明すると、そんなお返事が返ってきました。


「そうでしょうか。でも、やはり…私が怪我をさせたとなると相手がどんな人であれ申し訳ないといいますか…」


私がしどろもどろに言うと、ぷんぷん怒っている綾乃ちゃんが呆れたような顔になってしまいました。


「美咲は優しすぎだよ…」


そうでしょうか?


「とにかく、犯人の手がかりは何もありませんし、もう諦めていますから」


なるべく綾乃ちゃんの気持ちを落ち着けたくて言うと、


「だからって!美咲が本気出せば、そんなヤツ、きっと一発でやっつけられるんだよ?次からは情けは無用!犯罪者に優しさなんて必要ないって!!!」


逆効果だったみたいです…。


でも、私を心配して自分のことのように怒ってくれる綾乃ちゃんを見て、どっちが優しいんだか、と思い、つい顔が緩んでしまいました。


「うん、やっぱり美咲はコンタクトにして正解だよ。ひったくり犯には腹が立つけど、美咲からメガネを取り上げた点については評価しなくもない。あとは前髪をもうちょっと短くすれば完璧なんだけどな…」


なんて言う綾乃ちゃんは、言ってる内容はめちゃくちゃですけど可愛い女の子です。

私は身長が165cm。

基本が地味なせいか、あまり女の子らしいとは言えないと思います。

そんな私と違って、綾乃ちゃんは身長155cm、おまけに女の子らしい可愛さを兼ね備えているという、まさに私からすれば理想的な女の子なのです。

部活もサッカー部のマネージャーをしていて、男の子にも人気があります。


よく告白されているのですが、誰ともお付き合いをしていないのは、気になる人がいるからだそうです。

その気になる人が誰なのかを聞いたら、


「恥ずかしい〜」


と顔を真っ赤にしてしまったので、そのまま聞きそびれているのです。

きっと、そのうち教えてくれるのではないかと…。




< 17 / 251 >

この作品をシェア

pagetop