拗らせDKの偏った溺愛
私たちの学校の周りは小さな町工場や古い長屋のおウチが残っているのですが、竜也くんの住むマンションに近づくとともに徐々に新しい家が増えていきます。
そして、学校から竜也くんのマンションへ向かう抜け道の、ちょうど真ん中くらいに取り壊し予定の町工場があります。
抜け道になるくらいの場所ですから、大通りから奥まった道沿いです。
今は周辺を含めて全くと言っていいほど人気がありません。
町工場の周囲は、取り壊しの工事予定が書かれた看板とともに大人の背丈くらいのフェンスが巡らされています。
なんとなく近寄り難い雰囲気のある場所なので、いつも足早に通り過ぎるフェンス沿いの道を、今日はダッシュで通り過ぎようとしていました。
そんな私の耳に、どこからか小さな物音と人の声が聞こえた気がしました。
ふと立ち止まって周りを見渡しましたが、近くには誰もいません。
気のせいかな、と思って再び足を動かそうとした時、
「ガシャーン!!」
今度はしっかりとした音が響いてきました。
それも、モノとモノが激しくぶつかるような音です。
それが確かに取り壊し予定の工場の中から聞こえてきたのです。