拗らせDKの偏った溺愛



「すごい…」


思わず口をついて出た言葉は、ほぼ無意識のものでした。


「ハッ!素人のお嬢ちゃんが見てもそう思うくらい実力差は明白だってのに…バカ坊ちゃんときたら何度言っても理解できないらしくて参るよ」


失笑とともにお返事が返ってきて、思わず男性の顔を見てしまいました。

なんとなく合わさった目と目。


「…大変ですね」


これまた自然と口をついて出てきた言葉に、


「わかってくれる?」


と眉を下げて和やかな声になる男性。


「大人は大人でいろいろ大変なんですね」


そんな場違いな会話をしていたら、


「クッソォォォォォッ!!!!!」


一際大きな叫び声が聞こえてきました。

思わず声の方を見ると、真っ白なダボダボのトレーナーに同じくダボダボの濃紺デニムパンツ。

無駄にギラギラ光るゴールドのアクセサリーが、まるでどこかのラッパーの方を彷彿とさせるようなファッションの男性が奇声を上げ続けています。


「あ〜あ、とうとうマジギレしちゃったよ」


ため息混じりに言う男性に


「もしかして、あれが噂のおぼっちゃまですか?」


と聞けば、


「わかる?」


と言う暗い声のお返事が。

どうやらおぼっちゃま以外はみんな竜也くんにやられてしまったようです。

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