拗らせDKの偏った溺愛
近々取り壊し予定の廃工場の中から、ガラの悪い男たちがゾロゾロ出てくるのが見えた。
あ~、なんか悪い予感がする・・・。
その予感を振り払うように足早に通り過ぎようとしたら、今度は後ろから声をかけられた。
「高村竜也さんですよね?」
丁寧な話し方をする男の声に、さらに嫌な予感が重なるのを感じつつもゆっくりと振り返った。
そこには確かに見覚えのあるラッパーファッションの太っちょと、なんとなくどこかで見たことのあるようなきちんとした身なりの男がいた。
「そうだけど、なに?」
俺は男の方に返事をしたつもりだったけど、男が口を開く前に太っちょが金切り声で言った。
「高村竜也!今日こそ目にもの見せてやる!!覚悟しろ!」
あ~、なにこれ、めんどくさっ!
そう思って太っちょの隣にいる男の顔を見ると、
「申し訳ありませんが、少しだけお付き合いいただきますよ」
薄ら笑いで言われた。
これはなにがなんでも、一戦やらないとダメなやつってことか。
「俺、今から学校なんだけど?」
「うるさいっ!普段は適当にサボってるくせに、こんな時だけ真面目ぶるんじゃないっ!」
太っちょに金切り声で言われたことはたいして気にならなかったが、
「お一人のときでなく、お友達といるときにお声掛けした方がよかったですか?」
静かな声で男に言われた言葉に覚悟が決まった。
「この廃工場は、おあつらえ向きの場所ってことか」
「ご理解が早くて助かります」
薄い笑顔のままの男に促されて、俺は足を廃工場へと向けた。