拗らせDKの偏った溺愛


美咲、お前はこの空気を読んで、ちょっとは大人しくしてたんじゃなかったのかよ…。

マジで勘弁してくれ。

美咲も「しまった!」という顔をして、慌てて俺との関わりが”同じ学校の生徒同士”くらいしかないようなことを言っているが、どこまで通用するか…。

とにかく、なんとかして美咲だけでもここから出さねーと。

そうこうしているうちに、美咲のしどろもどろの言い訳を真に受けた太っちょが、この場での美咲に大した価値がないと判断したらしい。

ただ、判断したまではよかったのに、イラついたその怒りをよりによって美咲に向けた。

バシッ!

軽いとはいえ、美咲に蹴りを入れやがった。


「キャッ!」


美咲が小さな悲鳴をあげてよろける。

その姿を見た瞬間、俺の中を、感じたことのない感情が走った。


「このクソデブがっ!」


思わず我を忘れて、美咲に駆け寄ろうとした。

けど、それは一歩踏み出したところで止められた。


< 191 / 251 >

この作品をシェア

pagetop