拗らせDKの偏った溺愛
美咲、お前はこの空気を読んで、ちょっとは大人しくしてたんじゃなかったのかよ…。
マジで勘弁してくれ。
美咲も「しまった!」という顔をして、慌てて俺との関わりが”同じ学校の生徒同士”くらいしかないようなことを言っているが、どこまで通用するか…。
とにかく、なんとかして美咲だけでもここから出さねーと。
そうこうしているうちに、美咲のしどろもどろの言い訳を真に受けた太っちょが、この場での美咲に大した価値がないと判断したらしい。
ただ、判断したまではよかったのに、イラついたその怒りをよりによって美咲に向けた。
バシッ!
軽いとはいえ、美咲に蹴りを入れやがった。
「キャッ!」
美咲が小さな悲鳴をあげてよろける。
その姿を見た瞬間、俺の中を、感じたことのない感情が走った。
「このクソデブがっ!」
思わず我を忘れて、美咲に駆け寄ろうとした。
けど、それは一歩踏み出したところで止められた。