拗らせDKの偏った溺愛
「クソッ!」
太っちょと違って、裕司ってやつは隙がない。
そのせいで、その脇をすり抜けて美咲のところへ行くことも簡単じゃない。
そんな俺を見て、太っちょがいやらしい笑みを浮かべた。
「へぇ、彼女じゃないけど、助けようとするくらいの間柄ではあるわけだ」
そう言って、今度は美咲へと目線を戻すと、美咲から遠ざかろうとしていた足を、再び戻し始めた。
「そいつは関係ないだろ!お前が痛めつけたい相手は俺なんだろ!だったらそいつにちょっかいかけてないで、俺に向かって来いよ!」
睨みつけながら言えば、
「そうはいうけどさぁ、お前、生意気に反撃してくるだろ。僕はお前が痛めつけられるところを見たいわけなんだし、黙って僕にボッコボコにされるって言うなら、この子を先に開放してやらなくもない」
ときやがった。
そうだろうな。こいつの目的は最初から俺だったからな。
「…わかった」
俺は覚悟を決めた。
「お前の好きにすればいいだろ。その代わり、そいつは今すぐ解放しろ」
床にあぐらをかいて座ると、俺は静かに太っちょにそう言った。
美咲が
「だ、だめです!!そんなこと!」
とかなんとか叫んでるけど、だめじゃねぇっての。
そもそもお前はただ巻き込まれただけだし。
それなのに蹴られたりとか、ありえねぇ。
美咲を困らせたりいじめていいのは俺だけだっつーの!
怒り似たようなその感情は、俺に覚悟を決めさせるには十分なエネルギーになった。