拗らせDKの偏った溺愛
〈竜也〉


俺は覚悟を決めて床に座り込んでいたはずの腰を思わず浮かせた。

なにって、美咲のバカが太っちょに殴られそうになったから。

。。。

殴られそうになったからなんだけど…。。。

まぁ、結果を言えば美咲は殴られなかった。

殴られなかったどころか、美咲を殴ろうとした太っちょを、事もあろうか一撃で完膚なきまでに沈めやがった。

文字通り太っちょの巨体は膝から崩れ落ち、デコを派手に床に打ちつけた後、微動だにしない。

あれは完全に気を失ってるな…。

当の美咲はというと、自分がやったというのに、まるで他人事のように床に沈んだままの相手を"うわぁ"みたいな顔で覗き込んでいる。

なんなんだよマジで。

あいつ、さっきあの太っちょに足蹴にされて「キャァ」とかなんとか…それっぽい悲鳴あげてなかったか?


「はぁ〜〜〜」


なんだか整理しきれない感情に押されて、無意識のうちに長い溜め息が出ていた。

そして、一連の美咲の行動に言葉も出ない俺は、中途半端に床から浮かせた腰を、溜め息とともにもう一度床に戻した。

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