拗らせDKの偏った溺愛

やっと学校に到着です



〈美咲です〉


「おい、行くぞ」


思ったより近くから竜也くんの声がして振り向くと、すぐそばに彼が立っていました。


「りゅ、竜也くん!大丈夫ですか!?どこかケガしてませんか!?」


大慌てで立ち上がってザっと顔や体を確認しましたが、顔にはこれといった傷は見当たりません。

ですが、手が、手に血がいっぱいついています!!


「手に血が・・・!」

「大丈夫だっての。俺の血じゃねーし。それより、学校にいくぞ」

「え?俺のじゃないって・・・それじゃその血」


と言いかけた私をスルリと無視された竜也くんは、私の手を取ると工場の出口に向かって歩き出そうとされました。

思わず後ろを振り返ると、裕司さんがニコニコしながら手を振ってくださっています。

私が振り返ったのに気づいて同じように振り返ってくださっていた竜也くんの顔を見ると、


「まぁ、そういうこと」


と。

竜也くんの言う”そういうこと”がなんのことだかさっぱりわかりませんが、とにかくこれ以上、ここにいなくてもいいということはわかりました。

手元に時間のわかるものはありませんが、急いで学校に戻れば竜也くんの出場競技には間に合うはず!

私の実行委員としての仕事には穴をあけてしまっているでしょうけれど・・・。

こればかりは致し方ありません。

今は竜也くんが無事に体育祭に行けることを喜びましょう。


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