拗らせDKの偏った溺愛


「美咲!その土嚢、しっかり持ってろ!!」


横から竜也くんの怒声が飛んできて、なにがなにやらわからずパニックに。


「え?えぇ?」


なんとか声のした方へ顔を向けた時には、すでに目の前に竜也くんの姿が。

状況を理解する暇もなく、


「お前、その土嚢落としたら、全校生徒の前でお仕置きだからな」


という竜也くんの声に


「ひぃっ」


という声しか出せませんでした。

次の瞬間、自分の意に反して、体が重力に逆らう感覚が!

とにかく大慌てで土嚢にしがみついていた腕に力を入れました。

それはもう、ほぼ反射的でした。

頭で考えて言葉の意味を理解した行動ではなく、本能が危険を察知して火事場の馬鹿力が発揮されたとでも言いましょうか・・・。

自分の体が宙に浮く浮遊感と、重たい土嚢を両腕に抱え込んだのが同時だったのです。


「「「いや~~~~~!!!!!」」」

「「きゃ~!!」」

「「「なに!?どういうこと??」」」

「お、おい、あれ誰だ?」

「なんで竜也さんが!?」

「「「リュウくん、いや~~~!!」」」


ものすごい悲鳴の嵐でした。

かくいう私はというと、気づけば胸というかお腹というか、とにかく土嚢を赤ちゃんのように抱きかかえたまま、竜也くんに横抱きにされていました。


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