拗らせDKの偏った溺愛


いわゆるお姫様抱っこをされている私。

その胸には5kgの土嚢…。

なんともシュールな自分の状況をやっと理解して、恐る恐る見上げたのは私を土嚢ごと抱き上げて走る竜也くんの顔です。

艶めく銀髪、シャープな顔の輪郭、切長の二重を有する黒い瞳は真っ直ぐ前を見ています。

今更ながらにカッコいいというか、綺麗な方です。

そして初めて見ました。こんなに一生懸命な表情。

いつも飄々とした雰囲気のイメージでしたので、とても意外でした。

さらに驚いたのは竜也くんの顎から滴る汗です。

それもそうです。

スタートからいきなり200mのハードル走

100mのサッカーボールドリブル走

平均台2本分を全力疾走な上に、

背の高い男子の身長と同じくらいの高さがある跳び箱を2つ。

私は土嚢を運んでいたので見ていませんが、跳び箱のあとは、両手を拘束された状態での100m走があったはずです。

その後の土嚢5kgを抱えて走るゾーンが今です。

気力・体力ともに限界に達するタイミングでの土嚢ゾーンは、男子の障害物競走の中でもっとも過酷な部分です。

それにもかかわらず、5kgの土嚢どころか私まで抱えて走っているのです。

それはもう、走れている時点?私ごと抱え上げている時点?
もうこの際、どちらでもいいです!

大丈夫なんでしょうか!?

そもそも、どうして私を???

ただただ理解不能です!

とにかくわかっていることは、この土嚢を落としたら、お仕置きが待っているということだけです。

私は土嚢を抱える腕の力が万が一にも抜けてしまわないようにがんばるしかないのです。


< 211 / 251 >

この作品をシェア

pagetop