拗らせDKの偏った溺愛
きっつ・・・
さすがに土嚢と美咲を抱えて走るのはきつかったけど、それでも膝から血を流すコイツをあの場に置いたままなんてできなかった。
とにかく土嚢ゾーンを走り終えると、係の奴に美咲の持っている土嚢を引き取らせた。
ちょっと軽くなった美咲を抱えたまま俺は目の前の救護テントへと向かうと、そこにいたやつに美咲のケガの手当てを頼んでから競技に戻った。
戻ると、ちょうど2番手らしきやつがふわふわ浮く風船を手に持って走りだしたのが見えた。
さすがに先頭を走ってるヤツに追いつくのは厳しいかな。
そう思いつつ、俺も風船を受け取って走り始めた。
前に進もうとする俺を、手に持った風船が風を受けて後ろへと引き戻そうとする。
風船にイライラしながら走り始めて、ふと思った。
美咲を抱えるまで、先頭を走っていたのは俺。
それがこのまま3位や2位でゴールしたとなると、あとで美咲が自分のせいだとかなんだとか言いかねない。
俺が勝手にやったことだと言っても気にして突拍子なことをしかねない。
なんたって、あの太っちょとの喧嘩騒ぎに首を突っ込んできたくらいだ。
「チッ」
俺は気合いを入れ直すと、全力で走ることにした。