拗らせDKの偏った溺愛



…春休みは課題もないしラクだから好きだ。

けど、相変わらず退屈な毎日だったせいか、普段ならどうでもいい学校が新学期というだけで楽しみに思えるからすごい。

いつもは早起きがダルイから、授業が始まって人通りが少なくなった頃にダラダラ登校してるけど、


「今日は新しいクラスが発表されるんだし、朝から行こう」


と、朝早くから俺の家に乗り込んできた貴紀に無理矢理起こされたのもあって、いま、普通に登校しているくらいだ。


貴紀ほどじゃないけど、俺だって新しいクラスは気になる。

面白い奴がいるとか、面白いことが起こるようなクラスだと退屈しなくていいんだけど。


貴紀も同じようなことを考えているらしく、


「新しいクラスで竜也が会ったことない人がたくさんいるといいね」


なんて言ってる。


こいつはホントにケンカしてる時と、そうじゃない時で別人だな。

普段はのほほんとしてるくせに、一度キレると俺でも止めるのが大変だ。

こいつは怒らせない方がいいタイプの人間だと思う。

それなのに、そんなことを知らない女どもが今日も朝からキラキラした目で貴紀の姿を追ってる…。

知らないって怖い。


掲示板の前は、新しいクラスが貼り出されているのを見ようとする生徒でごった返していた。


「だりぃ…」


「竜也、まだ何もしてないよね?」


人だかりを見たとたん、やる気を無くした俺を見て貴紀が苦笑いを浮かべた。


「しょうがないなぁ、竜也のクラスも見てくるからちょっと待ってて」


「よろしく〜」


ヒラヒラと手を振る俺にもう一度苦笑いを浮かべると、貴紀が人だかりの中へ入っていく。

俺はそれをぼんやりと眺めていた。

待っているあいだに周りから


「高村くんだ!」


とか


「東のリュウがいる」


とか…。

俺は見世物か?

だから朝から学校に来るのは嫌いなんだ…。

貴紀、さっさと戻って来い!!



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