拗らせDKの偏った溺愛
嫁!?
「彼女じゃないけど、竜也の一番近くにいる女の子だよね?」
虎谷くんの質問のような、確認のような言葉に
「どういうこと?」
竜也くんではなく先輩が質問で返されます。
「だって、毎朝、寝起きの悪い竜也を起こしたり、3度の食事の面倒見たり・・・彼女っていうより、もういっそ、ね?」
キラキラした笑顔で虎谷くんが言うのに反して、周囲の女の子たちの顔がみるみるうちに青ざめていきます。
「そ、それって彼女っていうより、すでに・・・」
ハッ!!なんだかよからぬ方向に話が進んでいませんか?
私は竜也くんの下僕であって彼女でもなく、もちろんそれ以上のものでもなんでもありません!!
虎谷くんがどうしてあんな意味深な風に言われたのかはわかりませんが、みなさんが誤解する前に正しい解説をつけようとしたのですが・・・
「そうそう!美咲がいねーと俺、すっげぇ困る。なんたって俺のg」
「そうそう、竜也の生活には欠かせない存在なんだよね!」
おそらく竜也くんが”俺の下僕”と言おうとされたのを、虎谷くんがわざと遮ってしまわれました。
そして
”竜也くんの生活には欠かせない=下僕として”
というところを、きっと周りのみなさんは
”竜也くんの生活には欠かせない=嫁”
ぐらいに誤解されたに違いありません・・・。
悲鳴と号泣、その場に崩れ落ちる女の子たちに囲まれた私は、この後の高校生活、無事に卒業まで過ごすことができるのでしょうか。
せっかく下僕という立場を得ることで窮地を脱したはずでしたのに・・・。
なぜこんなことになってしまったのでしょう?
竜也くんは周囲の反応より虎谷くんに言葉を遮られたことに気を取られているご様子。
あぁ、今更私が「私は竜也くんの下僕です」と大声で叫んだとしても、みなさんには逆効果かもしれません。
それくらい、みなさん取り乱されています。
私はただただ茫然と眺めるしかありませんでした。
崩れ落ちて泣く大勢の女の子たちと、それをスルーして虎谷くんに
「お前、俺がしゃべってんのに邪魔すんなよ」
なんて無邪気にじゃれついている竜也くんを。