拗らせDKの偏った溺愛
〈美咲です〉
やっとの思いでお弁当を食べ終わり、空になったお弁当箱を膝の上で握りしめながら、綾乃ちゃんに言われたことをボンヤリと考えていました。
私が竜也くんを好き?
いつからでしょうか?
綾乃ちゃんの定義で言うと、最初の裏庭でのキスの時点ですでに嫌ではなかったので、もうその時には好きだったか、それに近い感情を持っていたということでしょうか。
考えているうちにまた顔に熱が集まってきました。
「熱いです・・・」
「え?」
少し遅れて食べ終わった綾乃ちゃんが、お弁当を片付けながら聞き返してこられました。
私は綾乃ちゃんの方に向き直って、ほぼ最初から竜也くんのことが好きだったのかもしれない、ということを話してみて、綾乃ちゃんの意見をお伺いしようとしました。
でも、できませんでした。
「おい、美咲」
聞きなれた声に驚いて振り向くと、今の今まで考えていた方、竜也くんご本人が目の前にいらっしゃいました。
「弁当」
「あ、はい」
グイっと目の前に出されたお弁当箱を反射的に受け取りました。
「弁当もうまかった。ごちそーさん」
いつものように言われた言葉なのに、いつもよりうれしく感じてしまいます。
幸せな気持ちに包まれた私でしたが、直後に氷点下まで心が冷えました。
「これで終わりにしてやる」
「え?」
「下僕。俺の下僕、これで終わりな」
たった今受け取ったお弁当箱を指差しながら言われて、一瞬なんのことだかわかりませんでした。
じわじわと意味が分かってきた途端、ショックで声も出せなくなりました。
「今までお疲れ」
竜也くんは私の頭にポンと手を置くと、そのままご自分の席に戻ってしまわれました。