拗らせDKの偏った溺愛
1階までの折り返しにある踊り場まで行くと、偶然アイツを見つけた。
なんとなくそのままその後ろをついていく流れになって、最後の階段を下り始めてすぐだった。
「きゃあっ!!」
アイツの隣にいた小さい女が突然階段を踏み外した。
俺は咄嗟にそいつの腕を掴んで支えたんだけど。
その瞬間、視界の隅でアイツの体がグラリと傾き始めた。
”落ちる”なんて思う暇もなかったから、ほとんど反射的に空いてる手を伸ばしてアイツの体を自分の方へ抱え込んだ。
「っぶねーなぁ」
こっちの小さい女はちょっと踏み外しただけだったけど、コイツは体ごと落ちそうだったぞ?
とりあえず小さい方の女をちゃんと立たせてやると、真っ赤な顔をしながら
「あ、ありがとう!!」
と、お礼を言ってきた。
それを無言でスルーして、抱え込んでいたアイツを支えながら声をかけた。
「おい、お前…」
なのに目が合った瞬間、
「キャァァ!!」
叫ばれた挙句、
パシン!
「ってぇ〜…」
なんで俺が殴られなきゃなんねーんだよ?
当然ムカついたので思いっきり睨んでやると
「ご、ごめんなさい!!」
アイツは叫ぶようにそう言ったかと思うと、事もあろうに、走って逃げていきやがった。
「……」
階段全体を包む奇妙な静けさ。