拗らせDKの偏った溺愛


<美咲です、大ピンチです>



目の前にいるお方こそ、先ほど私が恩知らずにもひっぱたいてしまった高村くんです。


「やっと見つけた」


そう言う口元には笑みが浮かんでいますが、それは微笑みとは程遠く…。

胸の前で腕を組んで仁王立ち。

そして私のことを見下ろすその目は全く笑っていません。


ど、どどどどど、どうしましょう?

今、私はどうするべきなんでしょうか!?

に、逃げる?

それとももう一度謝る?


…そうですね、ここはやはり誠心誠意、謝るべきですね!


「あ、あのっ!」


必死で言葉を探しながら謝ろうとしたのに、それは高村くんによって遮られました。


「俺、なんでお前に殴られなきゃいけないわけ?」


「そっ、そ、それはっ!」


き、気まずいです…。

平謝りして許してもらおうとしたんですが、理由を…理由を聞かれてしまいました!

理由を話せば少しは高村くんの怒りもおさまるかもしれません。

でも!


助けてもらった時に高村くんの手が思いっきり私の胸を掴んでいたので、つい…


なんてこと、私の口から説明するには恥ずかし過ぎます〜〜〜!!


でも、話すのをためらう私にイライラしてきたのか、高村くんがジリジリと距離を詰めてきています…。

同じく私もジリジリと後ずさりをして距離を取り直そうとしていたのですが、とうとう背中に冷たいコンクリートの感触が!

そっと両手で触って、どこか逃げる隙間はないかと探りましたが、ありませんでした。


それはそうでしょうね…どう考えてもこれは校舎の壁です。

裏庭は校舎と校舎の間の空間の真ん中あたりに位置していますから、壁伝いに逃げるとしたら校舎の端まで行かなくてはいけません。

つまり逃げ場が…

このままでは、私、成敗される!?



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