拗らせDKの偏った溺愛



途中に一人だけ、


「ちょっと、いい加減にしなさいよ!」


と、止めに入った女がいた。

さっき階段のところで最初に滑った小さい女。

美咲のことを名前で呼んでたし、元々仲が良いんだろう。


けど、そんなくらいじゃクラス全体の流れは止まらなかった。

担任すら見て見ぬ振りだ。


美咲を見ると、少し俯いたままで動かない。

もしかして泣きそうなのか?

だとしたらザマーミロだ。


「竜也…助けてあげないの?」


前の席に座ってる貴紀が小声で聞いてきた。


「さっきのも…竜也のことだから、あんな風に特定の女の子に絡んだら、他の女の子が黙ってないってわかっててやったよね?」


「…ふん、誰が助けるかよ」


吐き捨てるように一言だけ言うと、貴紀はそれ以上何も言ってこなかった。

目だけが何か言いたそうだったけど、もちろん気づいていないフリをした。


貴紀が言いたいことはわかってる。

昔から俺が誰が特定の女と仲良くなったりすると、なぜか他の女がうるさい。

俺に


「あの女は竜也のなに?」


とかなんとか。

俺に言うだけならまだマシで、今の美咲みたいに、相手の女の方に悲惨なことが起こることもあるらしい。


だから付き合おうものなら、いじめられたり陰で吊るし上げられたり…。

で、いずれ俺から離れていく、と。


もともと俺にしたら大した存在じゃないから、離れていくのは構わないんだけど。

俺のせいで辛い目にあわせるのは気分が悪いから、なるべく自分から声をかけないようにしてる。

貴紀は俺のせいで辛い目にあった女たちの相談によく乗っていたらしいし、俺が気をつけてることも知ってるから、余計にさっきのことで言いたいんだろう。




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