拗らせDKの偏った溺愛



まぁ、俺もさっきの腹いせのためだから、あんまり酷くなるようなら止めてやらないこともないけど?

でもまぁ、今くらいのレベルならまだ大丈夫だろ。


散々言われっぱなしのまま、ジッと立ち尽くす美咲を静かに見ていると、ふと、拳をギュッと握りこんだのに気づいた。


とうとう耐えられなくなったか?

泣いて叫ぶか、走って逃げるか…?

さぁ、どうする?


でも、美咲はそのどちらもしなかった。

俯いていた顔をスッと上げると、真っ直ぐ前を見た。

その先には、あの小さい女が心配そうな顔をして美咲を見ている。


なるほど、助けを求めるか?


そう思った俺の予想は、見事に裏切られた。

美咲は縋ろうとしていたのではなくて、決心をしたらしい。


その証拠に小さな女に向かって軽く頷くと、そのままストンと自分の席に座った。


一瞬、教室の中がシーンとする。


でも、次の瞬間、さっきまでよりもっと大きな声で罵声が飛び始めた。


けど、それを聞いて、俺はなぜだかフツフツと怒りが湧いてきた。

美咲にではなく、クラスの奴らに対して。

これが何の怒りかはわからないけど、強いて言うなら、


「これ以上コイツをいじめていいのはお前らじゃねぇっての」


って感じか?


俺の獲物を好き勝手にされてイラついたってことだな、たぶん。




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