拗らせDKの偏った溺愛


<美咲です>



一瞬、何が起こったのかわかりませんでした。

突然、高村くんが立ち上がって、


「自己紹介、さっさと終わらせろよ…。時間かけてっとダルくなるだろーが」


と言ったのです。

その途端に、さっきまで目つき鋭く私に色々言っていたみなさんが慌てだしまして。

あれよあれよという間に、自己紹介の続きが始まったのです。


まさしく鶴の一声です。


高村くんは存在感はもちろんですが、言葉にも行動にも、何か言い知れぬ迫力のようなものがあります。

だからでしょうか。

みなさん、彼には一目も二目も置いているようで、その彼の希望とあらば…ということで、あっという間に自己紹介が再開されたのです。


もちろん、私などみなさんにとって取るに足らない存在と化しましたよ?

でも、お陰で助かりました。


先ほど高村くんは


「思いっきりいじめてやる」


と言っていましたが、今のは逆に助けられたように思うのですが…。

私が勝手に自分に良いように考えているだけでしょうか?



< 55 / 251 >

この作品をシェア

pagetop