拗らせDKの偏った溺愛
〈めんどくせー…俺だっつーの〉
教壇の横に立つ美咲に、思い出したようにキツイ言葉を浴びせるクラスの奴ら。
たかが学校の係ごときで、何をそんなに熱くなる必要があるんだか…。
けど、教壇まで歩く時とは違って、こちらを向いて立っている美咲の顔は引きつっているように見える。
それにアイツ、また拳を力一杯握ってる…。
話す声は小さいし、要点はまとまってないしで、これじゃクラスの奴らじゃなくてもイライラするだろうな。
それでも、必死に副委員長をジャンケンで決める、と言おうとしてたんだが…男子の1人に遮られてるし…。
その後は野次が飛ぼうがなんだろうが、俯いたまま何も言わなくなってしまった。
…さすがにここまでくると行き過ぎだな。
早めに釘を刺しとくか。
俺のせいでアイツが他の奴らにいじめられるんじゃ意味がない。
俺がいじめてこそ俺の楽しみだっての。
…とはいえどうするかなぁ…。
いい考えが浮かばなくて思わず貴紀を見ると、俺の考えを読んだかのように
「この場は竜也が副委員長を引き受けると丸く収まるよ?」
とニコリと笑って言ってきた。
さすがの俺も
「マジで?」
としか返せなかったけど、こういう時の貴紀の案は、後になって
「やっておいて良かった」
と思うことがほとんどだ。
長い付き合いだからこそ、最近は無条件でそれを受け入れることにしてるんだけど…。
それでもまだ迷う俺に、
「こういうことで僕の案に乗らなくて後悔したことは?」
なんて聞いてきやがる。
「…めちゃくちゃある」
「でしょ?」
はぁ〜、しょーがねーか…。