拗らせDKの偏った溺愛



売店は売り切れにはなっていなかったのですが、お昼休みが始まって少し時間が経っていたために残っているパンの種類は数種類だけ。

元々種類の少ないお弁当に至っては残りわずか1個でした。


私は高校生になってから、基本お弁当は自分で作ってきているので、売店には飲み物を買いに来たことしかありません。

こんなにまじまじと売店のパンやお弁当を見るのは初めてですが…。


残っているパンは甘い系のものばかり。

高村くんがクリームやチョコがいっぱい入っているパンを食べる姿はあまり想像できません。

それに、男の子がお昼として食べるにはちょっと違う気がします。

せめて何種類かあるうちの1個がそういうものならまだしも…全部というのはさすがにないでしょう。

残り1個となったお弁当も、お弁当屋さんには申し訳ないですが、野菜のほとんどない炭水化物オンリーに近い内容です。

しかも量は普通のお弁当の半分くらい。

だから売れ残ってるんでしょうか?


でも、そんなことを言っても何か買って帰らないと高村くんはお昼ご飯抜きになってしまいます。

仕方がありません、せめてこのメロンパンに蒸しパンに…。


と、なるべく甘さ控えめのパンとお茶を買って、教室で待つ高村くんに大急ぎで届けました。



「あの、お待たせしました」


買ってきたものを机に並べて何を言われるんだろうとドキドキしながら待っていると、


「サンキュー。初めてのおつかいにしちゃ上出来じゃね?」


意外にも、と言ってしまうと失礼かもしれませんが、律儀にお礼を言われて少し驚きました。

高村くんはそれ以上何も言ってこなかったので、お財布を返して自分の机に戻りました。

綾乃ちゃんはニヤニヤしながら待っていましたけど…。


その後は特に声をかけられることもなく、その日一日が無事に過ぎていきました。


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