こんな男に誰がした!
デート
9月になると、俺は週1日会社に出向き、秘書課で会社について説明を受け、学んでいた。
さすがに秘書課は、綺麗な女性が揃っている。
秘書たちの熱い視線を感じながら、父親の第2秘書の片桐さんから、話を聞く。
秘書たちは、俺が、跡取りだと知っているから、玉の輿を視野に入れているのが、丸わかりだ。
お茶やコーヒーをやたらと持ってくるのだ。
俺は、笑顔でお礼を言うだけにしておいた。
冬休みには、フランスのワイン工場へも行く予定だ。俺は弥生も連れていくつもりだ。
弥生との初めてのデートは、ドライブをして、シーフードレストランで、食事をした。
次は、美術館巡り。二人とも影絵がすきなことがわかり、影絵美術館と、絵画美術館をはしごした。
3回目は、自然を味わおうと、紅葉を見がてらハイキングらしきものをした。
もっと頻繁に会いたいが、まとまった時間がなかなかとれない。
お互いに誕生日は過ぎてしまい、来年は祝いたい。目下のところ、クリスマスには何かプレゼントをと考えている。たぶん、フランスでのクリスマスになりそうだ。
そして今日、今話題の映画を観て、お酒を飲みに誘う予定だ。
まだ手は出さない。親同士が知り合いだから、慎重に事を運びたい。
映画館でチケットを買っていると、肩をたたかれた。
モデル仲間だった、久(ひさし)だ。
「輝 (ひかる)、しばらくぶりだな。デートか?」
久の隣にもかわいい女の子がいた。お互い様だろ。
「久の彼女か?」
俺は、こちらがわの話題を避け、質問を質問で返した。
「今付き合っている真悠子(まゆこ)。」
「こんにちは。」
俺が挨拶をすると、顔を赤くして頭を下げるだけの挨拶をしてきた。
それを見て、久は、面白くなさそうな顔をした。当然だ。彼氏の前で取る態度ではない。
これは、すぐ別れるだろうな。
弥生を紹介するつもりのない俺は、
「じゃ、急ぐから。」
と弥生の肩を抱いて、その場を去った。